多くの場合、水や酸素が金属表面に接触することで腐食反応が起こります。皮膜防食は水や酸素が金属表面に接触しないように保護皮膜によって腐食を防ぎます。電気防食は水や酸素が金属に接触しても、腐食反応の反対となる防食電流を流すことで腐食を防ぎます。耐食材料は腐食されにくい、腐食に強い材料を使用することです。環境制御とは水や酸素をできるだけ金属表面に接触させないことです。
図1のようにさまざまな防食方法がありますが、めっきや塗装はよく行われている防食方法です。皮膜防食は皮膜の材料や種類によって分類することがあります。たとえばめっきは金属系の皮膜であり、塗装は樹脂系(非金属)の皮膜です。また塗装は最もよく行われている防食方法になります。
めっき材料としては亜鉛、ニッケル、スズ、クロムなどがあります。塗装にもウレタン樹脂やシリコン樹脂などたくさん種類がありますが、主に樹脂系の材料です。めっきや塗装以外の皮膜防食には化成処理や溶射などがあります。化成処理とはリン酸処理、亜鉛めっき後のクロメート処理、鉄の黒染、アルミニウムの陽極酸化処理などです。
いずれの皮膜防食でも、下地金属との密着性がとても重要になります。どんなに皮膜材料が優れていても、すき間やはがれがあると、そこから水や酸素が下地金属に侵入して腐食が起こります。
また、皮膜材料は比較的腐食に強い材料が使われていますが、長時間使用することで皮膜の劣化、摩耗などが起こります。もちろん皮膜自身が腐食されることもあります。塗装が劣化した時は塗替えの時期になります。
腐食は電気化学的に金属と水の間で電子やイオンの移動が起こります。そこには腐食電流という電流が流れています。ここで腐食電流の逆向きの電流(防食電流)が流れれば、腐食が起こらずに防食になります。これが電気防食の基本的な原理です。
電気防食には直接電源を設置して防食電流を流す方法もあれば、金属のイオン化傾向を利用して意図的に防食電流を流すこともあります。たとえば亜鉛と鉄では亜鉛の方がイオン化傾向が大きいので、亜鉛から鉄に防食電流が流れます。その結果、亜鉛の方が優先的に腐食されます。これは亜鉛の犠牲陽極作用と言いますが、電気防食だけでなく亜鉛めっき鋼板などでも犠牲陽極作用は起こります。
犠牲陽極作用は亜鉛の他にもアルミニウムやマグネシウムなどにも起こります。電気防食は電流を扱うので、海水のように電気伝導度のある環境で実施しやすいです。
耐食材料とは現状よりも耐食性の高い材料に変更することです。たとえば鉄鋼からステンレス鋼に材料変更することなどです。一般的な環境では鉄鋼よりもステンレス鋼の方が耐食性に優れています。また、環境によってはアルミニウムや銅などの材料も耐食性に優れます。
もちろん、これらの材料は鉄鋼よりもコストが高くなります。しかし、材料費と長期間の使用に伴う腐食防止のメンテナンス費を考えた時にどちらにメリットがあるか判断します。
環境制御とは腐食の原因となる水や酸素をできるだけ金属に触れないようにすることです。水や酸素を完全に遮断するためには真空装置など高価で大掛かりな装置が必要になります。しかし、真空装置ほど大掛かりでなくても乾燥剤、除湿剤、防錆シート、防錆油など比較的手ごろな方法もたくさんあります。
乾燥剤や除湿剤は金属表面に触れる水や酸素を吸収します。防錆シートや防錆油は金属表面を保護して水や酸素を金属からブロックします。このような方法は腐食を完全に防止することはできませんが、ある程度腐食速度を抑えることができます。
ただし、環境制御は製品サイズに制限されることが多く、大きい製品に対しては適用することが難しいです。また密閉容器や製品の長期保管などある程度限定されますが、実施されています。
このように防食にはたくさんの方法がありますが、どんな防食でも100%完全に腐食を防止できるわけではありません。1回防食したから大丈夫と思って油断して何もメンテナンスせずに放置すると、いつの間にか腐食が起きているかもしれません。
日常点検をしっかりと行い、腐食の発生に注意することが大事です。腐食を防ぐ簡単なメンテナンスは清掃です。金属表面に付着した汚れや水分を清掃することは、見た目の清潔さだけでなく防食としても効果があります。