4.塗料が固まるメカニズム ③UV硬化塗料用バインダーシステム
2026/06/03小林 敏勝
[現職] 小林分散技研 代表,東京理科大学理工学部客員教授
[専門] 粒子分散、コロイド・界面化学
[経歴] 1980年京都大学大学院工学研究科工業化学専攻修了、日本ペイント(株)入社。1993年京都大学博士(工学)。2010年東京理科大学客員教授、日本ペイント(株)退職。2011年小林分散技研設立。
[現職] 小林分散技研 代表,東京理科大学理工学部客員教授
[専門] 粒子分散、コロイド・界面化学
[経歴] 1980年京都大学大学院工学研究科工業化学専攻修了、日本ペイント(株)入社。1993年京都大学博士(工学)。2010年東京理科大学客員教授、日本ペイント(株)退職。2011年小林分散技研設立。
紫外光(UV光)を照射して、光のエネルギーで硬化させる塗料を「UV(硬化)塗料」と呼びます。通常はライン塗装で用いられ、極めて短時間(数秒)で硬化し、また、低温で硬化するため、プラスティックなど熱に弱い被塗物にも適用可能です。
架橋密度が高いため、硬度が高く、耐薬品性、耐摩耗性、耐溶剤性に優れています。
光が当たった部分のみが硬化するので、複雑な3次元形状の被塗物には適していません。また、厚膜での塗装や、顔料を高濃度で含有する塗料の塗装では、塗膜内部まで光が届かないので、やはり向いていません。
UV光で硬化するバインダーシステムには、ラジカル重合型とカチオン重合型がありますが、樹脂のバリエーションとコストの点から、塗料ではラジカル重合型が主流となっています。以下では、ラジカル重合型のUV硬化塗料について説明します。
ラジカル重合型UV硬化塗料用バインダーシステムの代表的な組成を表1に示します。
基本的には、低分子量の「重合性モノマー」、分子量が大きくて二重結合を持つ「プレポリマー」、「光重合開始剤」で構成されます。これらの成分が、あらかじめ適切な比率で混合されたものが、UV硬化塗料として供給されます。重合性モノマーやプレポリマーの多くは、アクリル酸とのエステル化合物で、「アクリレート」と呼ばれます。代表的な重合性モノマーの化学構造式を図1に示します。
重合性モノマーの分子量は、一般的な有機溶剤と同等です。硬化前の塗料状態では、プレポリマーを溶解して塗料粘度を低く保つ溶剤のような働きをします。UV光が照射されると、他のモノマーやオリゴマーと重合して塗膜の一部になります。このため、UV硬化塗料は液状塗料なのですが、硬化後は構成成分が全てバインダー成分となり、揮発分ゼロの塗料が設計可能です。
このように、溶剤のような働きをしながら硬化後は塗膜の構成成分になるものを「反応性希釈剤」と呼びます。
図1に示した重合性モノマーのうち、「単官能性モノマー」は反応しても鎖が長くなるだけです。一方、「二官能性モノマー」や「多官能性モノマー」を配合することで、鎖間に架橋が生じ、丈夫で硬い膜になります。重合性モノマーは、反応性、臭気、毒性、蒸発温度と蒸発速度、狙いとする膜の物性などの観点で選択されます。
図1の重合性モノマーだけで塗膜を構成すると、塗膜中の架橋点の数が非常に多くなります。このため、塗膜硬度は高くなるのですが、多くの場合、もろくて、被塗物への密着性や諸耐久性能が不良となります。
このような欠陥を補うのがプレポリマーです。プレポリマーは分子量が1000~2000程度の重合体で、「オリゴマー」と呼ばれることもあります。プレポリマー鎖はウレタン結合、エポキシ基の重合反応、エステル結合、ラジカル重合など様々な様式で構成されています。共通するのは、側鎖や末端にアクリル酸に由来の二重結合が存在することです。このため、「ウレタンアクリレート」のように主鎖を構成する反応様式にアクリレートを付けて呼ばれます。
プレポリマーをUV硬化塗料に配合することにより、硬いがもろいという欠陥を改善するとともに、ポリマー鎖それぞれの特徴を塗膜に付与します。例えば、ウレタンアクリレートは強靭性や可とう性、エポキシアクリレートは密着性や耐薬品性を付与します。
光重合開始剤は大別すると、ベンゾイン誘導体、α-ヒドロキシアセトフエノンなどの分子が直接開裂してラジカルを発生するタイプ(分子内開裂型)と、ベンゾフェノン・アミン系のように、水素のやり取りをしてラジカルを発生するタイプ(水素引抜型)があります。
実際には顔料や紫外線吸収剤、光安定剤、貯蔵中の安定化のための重合禁止剤などが配合されるので、これらとの兼ね合いで適切な品種や配合量を選択します。
UV硬化型塗料は、家具やフローリングなどの木工製品、飲料缶、光ディスク(CD・DVD)、携帯電話のコーティング材などに用いられています。
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