世界各地の塗料市場においても、日本と同様に原材料コストの高騰と供給網の混乱が深刻な影を落としている。グローバルメジャーメーカーは、供給維持を掲げた「防衛的値上げ」を断行している。
世界最大手の一つであるPPGインダストリーズ(米国)は、4月15日、全世界の全製品ポートフォリオを対象に「最大20%」の価格引き上げを開始したと発表した。注目すべきは、今回の改定の主眼として「製品の可用性(供給体制)の確保」を明確に掲げている点である。これは、現行の価格体系では原料確保や物流網の維持が困難なほどコストが圧迫されている、実質的な「供給危機」に対する防衛策といえる。
北米最大手のシャーウィン・ウィリアムズ(米国)も3月の事業報告において、物流コストの変動と原材料の入手可能性に関するリスクを強調した。2026年年初からの段階的な価格改定に加え、さらなるコスト増を販売価格へ即座に反映させる姿勢を鮮明にしている。また、欧州のアクゾノーベル(オランダ)は、4月の市場分析の中で、エネルギーコストの衝撃による利益率の低下を防ぐため、全事業部門での機動的な価格転嫁が不可避であるとの認識を示した。
海外では、明文化された「出荷規制」という形をとっていない。「大幅な値上げの受容がなければ安定供給を保証できない」という、価格メカニズムによる実質的な供給制限が進行している。この世界規模での「コストと供給の戦い」は、各国ユーザー側における共通の脅威となっている。