4.塗料が固まるメカニズム ②加熱して固める1液型バインダーシステム
2026/02/04小林 敏勝
[現職] 小林分散技研 代表,東京理科大学理工学部客員教授
[専門] 粒子分散、コロイド・界面化学
[経歴] 1980年京都大学大学院工学研究科工業化学専攻修了、日本ペイント(株)入社。1993年京都大学博士(工学)。2010年東京理科大学客員教授、日本ペイント(株)退職。2011年小林分散技研設立。
[現職] 小林分散技研 代表,東京理科大学理工学部客員教授
[専門] 粒子分散、コロイド・界面化学
[経歴] 1980年京都大学大学院工学研究科工業化学専攻修了、日本ペイント(株)入社。1993年京都大学博士(工学)。2010年東京理科大学客員教授、日本ペイント(株)退職。2011年小林分散技研設立。
室温で硬化する常乾塗料は、建築・建設現場での塗装や、工業塗装でも被塗物が大型で熱容量が大きかったり耐熱性が乏しかったりする場合に適しています。一方、気温や天候に仕上がり品質が作用されたり、雨天や降雨が予想されるときには塗装ができなかったりするなど、計画的な塗装作業への制限があります。
これに対して、屋内で行うライン塗装では、比較的均一な条件での塗装が可能です。場合によっては塗装ブースの温湿度調整も行われており、高度に制御された塗装環境条件の設定も行われています。また、乾燥炉(オーブン)による温度と時間をコントロールした加熱硬化が行われるため、品質のブレの少ない塗膜を短時間で形成できます。
ライン塗装では、主剤樹脂と硬化剤の両方を含有する1液の塗料が主に使用されます。主剤樹脂と硬化剤は、常温(貯蔵中や塗装作業中)では反応しませんが、乾燥炉で所定の温度に加熱されると反応を始め、所定時間の加熱で目標とする塗膜物性が発現します。
加熱硬化させるので、「加熱硬化塗料」もしくは「焼付塗料」と呼ばれます。1液型加熱硬化塗料に使用される代表的なバインダーシステムは、「メラミン硬化塗料」と「ブロックイソシアネート硬化塗料」です。以下ではこの2つの塗料系について解説します。
主剤樹脂にはポリエステル樹脂、短油アルキド樹脂、アクリル樹脂などのポリオール樹脂(水酸基を持つ樹脂の総称)が用いられます。硬化剤にはメラミン樹脂を用います。硬化反応に、図1に示すポリオール樹脂の水酸基と、メラミン樹脂のアルキロール基、もしくは水酸基との架橋反応を利用するバインダーシステムです。
ポリオール樹脂の水酸基価は20~200程度で、ポリオール樹脂とメラミン樹脂の混合比率は固形分比で8:2~4:6に設定されるのが一般的です。
図1の架橋反応には酸触媒が必要です。このため、ポリオール樹脂に6~20の酸価を持たせておくか、パラトルエンスルホン酸などの酸性化合物を塗料に添加します。
加熱温度は120℃~240℃で、比較的、幅があります。例えば一般工業用では140°×15分、プレコートメタルでは220°×1分のような設定がされています。
アルキド樹脂やアクリル樹脂など主剤樹脂の主鎖構造が同じという条件下で比較すると、常乾塗膜に比べて、メラミン樹脂によって架橋して高分子量化するので、高硬度で高耐久、高耐候性の塗膜が得られます。
メラミン樹脂の置換基の種類や加熱条件により、塗膜からホルムアルデヒドが発生することがあるので、鋼製家具などに塗装した際のシックハウス症候群には注意が必要です。また、耐酸性・耐アルカリ性は次に説明するブロックイソシアネート架橋を用いるバインダーシステムより、やや不良です。
自動車(新車)用ベースコート塗料・中塗塗料、一般工業用塗料などに用いられます。またポリオール樹脂として比較的高分子量(数千~数万)のオイルフリーポリエステル樹脂を用いたものが、プレコートメタル用塗料に用いられています。
水溶性もしくは水分散性のポリオール樹脂と、完全メチルエーテル化メラミン樹脂やそれに近いメラミン樹脂との組み合わせで、水性塗料の設計も可能です。
イソシアネート基は反応性が高いので、ポリオール樹脂と混ぜると、室温でもすぐに反応します。従って、そのままでは2液型塗料にしか使用できません。また水とも反応するので水性塗料にも使用は困難です。
これを解決するために、イソシアネート基をあらかじめブロック剤と呼ばれるアルコール類、フェノール類、ラクタム類などと反応させたものを、ブロックイソシアネート(BI)と呼びます。
BIはポリオール樹脂と混ぜて1液にしておいても、イソシアネート基がブロックされているので、架橋反応はおこりませんが、加熱すると、図2に示すようにブロック剤が解離してイソシアネート基が再生し、ポリオール樹脂と反応します。
BIを硬化剤として用いると、ポリオール樹脂との1液加熱硬化型塗料や、水性塗料化も可能となります。
ブロック剤にはアルコール類、フェノール、ε-カプロラクタムなどが使用されます。図2に示したのは、ブロック剤がフェノールの例です。ブロック剤が解離する温度を「解離温度」と呼び、アルコール類は170~210℃、フェノールとε-カプロラクタムは140~145℃です。最近ではブロック剤に活性メチレン基を有する化合物を用いることにより、解離温度が120℃以下のBIも出現しています。
ポリオール樹脂とブロックイソシアネートからなるバインダーシステムを用いると、ウレタン構造特有の強じんで可とう性に富んだ性質の塗膜が得られます。
耐候性に関しては2液型ポリウレタン樹脂塗料と同様で、BIのイソシアネート成分としてトリレンジイソシアネート(TDI)のような芳香族イソシアネートを用いた塗膜には黄変性があり、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系やイソホロンジイソシアネート(IPDI)系イソシアネートを用いた塗膜は優れた耐候性を示します。
ポリオール樹脂としては、メラミン樹脂を用いる硬化系と同様に、ポリエステル樹脂、短油アルキド樹脂、アクリル樹脂などが用いられます。
水性塗料系や軟化温度が高い(50℃以上)ポリエステルポリオール樹脂やアクリルポリオール樹脂と組み合わせて粉体塗料にも使用されます。
ポリウレタン構造の塗膜が1液型で得られるのが長所ですが、解離したブロック剤が、乾燥炉内や排気ダクトにヤニとなって付着するのが欠点です。メラミン樹脂硬化系よりも高耐久性の塗料として一般工業用途等に用いられています。
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