金属製品は通常の鉄板でも、純度100%の鉄だけではなく炭素などの鉄以外の元素(金属以外の元素も含まれる)が一定量含まれている鉄板もたくさんあります。そしてJISでは添加する元素の種類や量はとても細かく規定されています。これは鉄だけではなく、アルミニウム、銅、ステンレス鋼などほとんど全ての金属材料にあてはまります。
特に他の元素を添加しない純度がとても高い金属を純金属、そして何か特定の元素を添加した金属を合金と呼びます。身の周りにある金属材料の多くは合金になります。そして、脱成分腐食とは合金の特定の元素や成分だけが腐食されてしまうことです。
ただし、脱成分腐食はどんな合金にも起こる腐食と言うよりも、特定の合金に起こるタイプの腐食と言えます。有名な脱成分腐食として黄銅の脱亜鉛腐食があります。黄銅(銅と亜鉛の合金で真ちゅうやブラスとも呼びます)の亜鉛成分だけが腐食してしまい、銅成分が残るという腐食です。脱亜鉛腐食の模式図を図1に示します。
銅に亜鉛が20%以上含まれた合金を黄銅と呼びます。一般的な黄銅に含まれる亜鉛はおおよそ30~40%ですが、亜鉛の量が多いほど脱亜鉛腐食が起こりやすくなります。なお、亜鉛が10%程度になると脱亜鉛腐食が起こらないと言われます。
黄銅中の亜鉛の量が高くなるとβという組織が見られます。このβが優先的に腐食されるので亜鉛が多くなるほど脱亜鉛腐食が起こりやすくなります。また、亜鉛は銅よりイオン化傾向が大きいので銅よりも腐食しやすいです。
脱亜鉛腐食の進行は表面から全体的に進行するタイプや特定の場所だけ進行するタイプがあります。材料の30~40%の亜鉛が腐食されてしまうので、残った銅はスポンジのようにスカスカになってしまいます。当然強度が下がるので、変形したり割れやすくなります。
亜鉛は腐食して溶解するだけではなく、腐食生成物として堆積したり詰まることもあります。黄銅は配管やバルブなどにも使用されています。そのような場所で脱亜鉛腐食が起こると漏えいしたりバルブ開閉が困難になります。
脱亜鉛腐食についてはメカニズムが完全に解明されていませんが、発生しやすい条件についていくつか分かっていることがあります。
- 高温ほど起こりやすい。
- 炭酸ガスを含んだ軟水で起こりやすい(日本は軟水が多い)。
- さまざまなpH(ペーハー)で起こるが、酸性ほど起こりやすい。
- 塩化物イオンがあり、すき間など水中の溶存酸素が少ないと起こりやすい。
脱亜鉛腐食を抑えるためにスズやアルミニウムを添加することがあります。30%亜鉛の黄銅にスズを添加した合金をアドミラルティ黄銅、40%亜鉛の黄銅にスズを添加した合金をネーバル黄銅、アルミニウムを添加した黄銅をアルミニウム黄銅と呼びます。
また、添加以外の方法として高温(550℃程度)で熱処理してβを低減することも試みられています。
黄銅以外に脱成分腐食を起こす材料として、鋳鉄の黒鉛化腐食、アルミニウム青銅の脱アルミニウム腐食などがあります。
鋳鉄とは鉄合金のなかでも炭素量が約2.1%以上の材料です。なお、炭素量0.02~2.1%の鉄は鋼、0.02%未満の鉄を純鉄と呼びます。鋳鉄は炭素量が高いため塑性加工が困難なので、溶解して固める鋳造という加工方法で製造されます。
そして鋳鉄には黒鉛という炭素の塊が材料中にたくさん見られます。黒鉛化腐食とは鋳鉄のなかで鉄が腐食されて黒鉛が残る腐食です。
黒鉛化腐食が起こると、見た目は通常通りでも中身は鉄が腐食されて腐食生成物となります。そして黒鉛が残るだけなので、応力が負荷されると強度が低下しているので変形したり割れが起きたりします。鋳鉄製の水道管の内面、ガス配管接手部の外面、土壌で起こりやすいと言われています。
アルミニウム青銅は銅とアルミニウムの合金です。青銅という名称はもともと銅とスズの合金を指しますが、アルミニウム青銅にスズは含まれていません。なお、上述のアルミニウム黄銅とは別の合金です。アルミニウム青銅はアルミニウムを約8~11%含んだ合金です。耐摩耗性や耐食性に優れています。
脱アルミニウム腐食とはアルミニウム青銅のアルミニウムが腐食される腐食です。銅とアルミニウムのイオン化傾向はアルミニウムの方がイオン化傾向が大きく腐食されやすいです。
アルミニウム青銅は冷却速度や化学組成によってγ2という腐食されやすい組織が見られます。そして、冷却速度を速くすることでγ2の生成を抑えることができます。