小林 敏勝
[現職] 小林分散技研 代表,東京理科大学理工学部客員教授
[専門] 粒子分散、コロイド・界面化学
[経歴] 1980年京都大学大学院工学研究科工業化学専攻修了、日本ペイント(株)入社。1993年京都大学博士(工学)。2010年東京理科大学客員教授、日本ペイント(株)退職。2011年小林分散技研設立。
[現職] 小林分散技研 代表,東京理科大学理工学部客員教授
[専門] 粒子分散、コロイド・界面化学
[経歴] 1980年京都大学大学院工学研究科工業化学専攻修了、日本ペイント(株)入社。1993年京都大学博士(工学)。2010年東京理科大学客員教授、日本ペイント(株)退職。2011年小林分散技研設立。
光干渉顔料は、基材となるマイカやアルミナフレーク、ガラスフレークなどのりん片状粒子に、二酸化チタンや酸化鉄などの透明な金属酸化物層を被覆した構造をしています。大きさは5µm~100µm(よく使われるのは10µm~30µm)で、粒子の厚みは大きさに対して1/50~1/100程度です。
粒子形状がりん片状で表面が平滑なので光を反射し、被塗物表面に平行に配向することで、塗膜にキラキラとした光輝感を付与します。このため、アルミフレーク顔料と同じ光輝顔料に分類されます。
さらに、被覆層(「干渉層」と呼ばれます。)が存在することで、色素を含有しないのに、着色して見えます。発色の原理を、図1を用いて説明します。
図1で、C’からA’に入射した光は、屈折してB’へ向かう光と、反射してD’に向かう光に分かれます。B’へ向かった光はB’で反射してAへ向かい、Aで屈折してDへ向かいます。一方、CからAに入射した光は、屈折してBへ向かう光と、反射してDに向かう光に分かれます。
従って、DにはC’→A’→B’→A→Dという道のり(「光路」)をたどった光とC→A→Dという光路をたどった光が同時に到達することになります。ただし、たどる光路には、A’→B→Aの分の差があります。これを「光路差」と呼びます。
光は波(電磁波)であり、AとA’には同位相の波が到達しています。光路差が半波長の偶数倍であれば、Dでは波の山と山、谷と谷が重なりあって、その波長に相当する光の色が強く見えます。
一方、奇数倍であれば山と谷が重なって、その波長の光を打ち消してしまうので、その色は消失します。このような効果を光の「干渉効果」と呼びます。
結果として、山と山が重なり合う波長の光の色が強く見えます。顔料を見る角度によって光路差は変化するので、干渉で強くなる波長も変化し、色が異なって見えます。
基材粒子の表面が光学的に平たんで、被覆層の厚みも均一であれば、粒子全体が同じ色に見え、見る角度によって色相もシャープに変化します。
しかし、一般的な商品は、基材粒子に天然マイカや魚りん箔を使用します。これらの粒子の表面は光学的にはとても平滑とは言えません。また、干渉層も液相法で形成されるため、その厚みも光学レベルでは不均一です。
このため、粒子全体が同じ色に見えることはなく、図2に示すように粒子表面の微小な領域ごとに色相は異なります。
この外観(見え方)が真珠(パール)に似ているのでパール顔料と呼ばれます。また、基材となる粒子にマイカフレークがよく用いられるので、パールマイカ顔料と呼ばれることもあります。
近年になって、基材粒子に人工的に合成されたマイカフレークやアルミナフレーク、ガラスフレークなどを用いたものが市販されています。これらの粒子の表面は、天然のものに比べると平たんなため、光輝感は優れています。
ただし、基材表面が平たんとはいうものの、光学的にはまだまだ不十分であるので、粒子全体が均一な色相に見えるレベルではありません。
基材粒子の全体にわたって光学的なレベルで平たんであり、干渉層の厚みも均一な干渉顔料が市販されています。その代表的な構造を図3に示します。
構成する層の数が多いので多重光干渉層顔料と呼ばれることもあります。先に説明した光干渉顔料は、液体中で干渉層を基材粒子表面に析出させる液相法で製造されるのに対し、多重光干渉層顔料は気相法で製造されます。
この方法では、まず平滑な基板の表面に、真空下で図3のaからeの各層が順に蒸着法で形成されます。蒸着法では各層の厚みも厳密にコントロールすることが可能です。各層の形成が終了したら、基板から剥離し、粉砕・分級して光輝顔料となります。層cが基材粒子の働きをします。
このような粒子に光が入射すると、入射光はハーフミラー層で半分が反射され、半分は内部に侵入します。侵入した光はスペーサー層を透過して全反射金属層で反射された後、再度スペーサー層を透過して粒子外へ出ます。
光の干渉については図1と同様であり、光路差(色調を決定)はスペーサー層の厚みで制御されます。各層の厚みが光学レベルで厳密にコントロールされているために、この方法で製造された光輝顔料を塗装すると、図4に示すように、被塗物を見る角度ごとに色相が均一であるとともに、角度の変化に応じて色相が大きく変化して見えます。
比較的粒子径が大きく、またりん片状ですので、着色顔料のようにビーズミルなどの分散機を用いると、粒子が変形したり壊れたりしてしまいます。このため、一般的には撹拌機(ディソルバー)のようなもので凝集体を解凝集させます。
一次粒子まで解凝集しても、比重が大きくて粒子径も大きいので、沈降しやすく、塗料の配合設計では適切な増粘剤(沈降防止剤)を処方することが必要です。また、粒子径が大きいので平滑な塗膜表面が得られにくく、光干渉顔料を含有する塗膜(ベースコート)の上にクリアー(オーバー)コートが塗布されます。
ベースコート中に光干渉顔料と着色顔料を併用することもあります。光干渉顔料の効果を十分に発現させるためには、併用する着色顔料は透明感があることが必要です。このため、着色顔料の分散粒子径を100nm以下とし、ヘイズ(白色散乱)をできるだけ少なくします。
白色は顔料による光の散乱で発現します。二酸化チタンのような白色顔料は光散乱能力を最大化するために、粒子径が300nm付近(可視光波長の約1/2の大きさ)に設計されています。従って、白色顔料と光干渉顔料を一層の塗膜中に併用すると、塗膜が濁ってしまい、光輝感の発現を阻害します。
このため、いわゆる「ホワイトパールマイカ塗装」と呼ばれる白色の光干渉顔料を用いた塗装系では、二酸化チタンを含む白ベースコートをまず塗布し、その上にパールマイカ顔料を含むパールマイカベースコートを塗布した後、クリアーコートを施す3コートシステムが採用されています。
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