アロンウオールTechnical Report 東日本大震災の調査結果
2024/10/16金森産業工業材料部
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2011年3月11日午後2時46分に三陸沖を震源(日本海溝付近、岩手県沖から茨城県沖までの南北約 500 km、東西約 200 kmのプレートが動いた)とする国内観測史上最大のマグニチュード9.0(世界4番目)の巨大地震が発生した。「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」と命名された未曾有の大地震は、阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震(1995年1月、マグニチュード 7.3)の約1,000倍のエネルギーを放出した。
この地震により、宮城県栗原市で最大震度 7、宮城県、福島県、茨城県、栃木県で震度6強など広い範囲で強く揺れた。更に、太平洋沿岸を中心に巨大津波が発生し、最大高さ9 m以上の津波は、最大溯上高さが40.5 m(岩手県宮古市)となり、海岸から 6 km内陸まで浸水させるなど、北海道から千葉県の海岸沿いの集落を破壊し、甚大な被害をもたらした。
東日本大震災と命名された本震災では、地震の揺れ、大津波、液状化現象、地盤沈下などにより、建物などへの被害が広範囲に及んでおり、日本政府はこれによる被害額を16〜25兆円と試算している。死者・行方不明者は2万人に近く、死因の92%は水死によるものであり、建物や家具の下敷きなどによる圧死・損傷死は4%程度と、大津波による被害がほとんどであった。
一方、阪神・淡路大震災での死因の約 90% は、圧死・損傷死で占められており、直下型地震で建物の破壊力が大きな揺れであった兵庫県南部地震に比べ、本地震による建物被害は揺れよりも、津波によるものの方が甚大であった。
今回、全国アロンコート・アロンウオール防水工事業協同組合(以下、全アロン防水組合と称す)技術委員会では、表 1 に示すメンバーによる特別調査団を結成し、7 月20〜22日にかけて宮城および福島県内の施工物件の被災状況を調査した。
今回の調査は、表2および図1に示す宮城県および福島県の18物件について行った。大震災による被害は、地震動と津波による2種類に大別される。稀なケースではあったが、宮城県牡鹿郡女川町にてアロンウオールを施工し、津波を受けた建物を調査(1件)することができた。これ以外には、宮城および福島県内のアロンウオール、アロンコート SQ およびクリスタルウオールを施工し、地震動による被害を受けた建物の調査(17件)を行った。
図 1 調査物件(赤丸の箇所)
宮城県牡鹿郡女川町に位置する鉄筋コンクリート造4階建の建物で、アロンウオール ST 工法を施工して31年経過した。海岸部から20〜30 mの高台にあるにもかかわらず、津波の被害を受けた建物である。
写真 1 に示すように、津波は2階まで押し寄せており、ベランダのアルミ製手摺がひどく損傷を受けている。外壁に施工されたアロンウオールは、津波と共に流れてきた流木等による当たり傷が散見されたが、海岸部に隣接する厳しい環境にありながらも、経年による劣化もなく、良好な状態であった。なお、本建物は、今後も使用するために補修中であり、アロンウオールもリフレッシュされる予定である。
宮城県内でアロンウオールを施工した建物の外観を写真2~5に示す。
いずれの建物も震度5強〜6 弱の地震動を受けているものの、外的な損傷もなく、アロンウオールの経年による劣化も認められなかった(写真3のブルーシートはエクスパンションジョイント部である)。なお、写真5の建物(RC造)に隣接している鉄骨造ALCパネル張りの建物(写真18)は大破し、相当な外力を受けているにもかかわらず、アロンウオールを施工した本建物の外壁面には、ひび割れの1つも認められなかった。
地震動により、非耐力壁にひび割れが発生した事例を写真6~10に示す。
外壁のコンクリート下地は、構造由来のせん断ひび割れが発生しており、地震の激しさを物語っている。すべての建物でアロンウオールが破断しているが、写真7~8のようにコンクリート片の落下を防止しており、施工後20年以上経過しても、アロンウオールは優れた付着性と柔軟性を維持していることが分かる。
更に、写真9では、仕上塗料に割れが認められるものの、防水層は破断せずに防水性および躯体保護機能を発揮していた。このひび割れ幅は0.3 mmであったが地震発生時の最大ひび割れ幅はこれ以上であると考えられることから、躯体の動きによっては、地震時に発生するひび割れに対しても、アロンウオールは十分追従可能であることを示した。なお、採取したアロンウオール塗膜のゼロスパンテンション伸び量は、4.3 mm(破断部の膜厚1.3 mm)であった。
写真10は、非耐力壁が大破した事例である。他の部分では幅0.65 mmひび割れが発生し、アロンウオールが破断していた。なお、採取したアロンウオール塗膜のゼロスパンテンション伸び量は、2.1 mm(破断部の膜厚0.5 mm)であったことから、地震発生時にはこれ以上のひび割れであったことが推察される。本物件は、現在、アロンウオールNEO工法による補修・改修が進められている。
勾配屋根および陸屋根にアロンコートSQを施工した建物の状況を写真11~13に示す。写真11のアロンコートSQ SQ-S(露出密着工法)には、不具合は認められなかった。
一方、写真12の鉄骨造ALCパネル張りの建物では、外壁のALCパネルの損傷状態や室内の天井仕上げの破壊状況から、相当な揺れがあったものと想定される。外壁のALCパネルには一般の弾性仕上塗材(ゼロスパンテンション伸び量1.0 mm程度、破断部の膜厚 0.5 mm)が塗装されていたが、余震のたびに破片が落下するため、危険であるとのことであった。
写真 13 に示すように、アロンコートSQ SQ -TK(露出通気緩衝工法)で仕上げた平場およびパラペット立上り部(メッシュ張り部)には全く不具合はなく、地震時の揺れに対して優れた追従効果を示した。しかし、塔屋壁面の立上がり部のみの ALC パネル接合部のアロンコート SQ はメッシュと共に破断していた。これは塔屋の階段室となっており、建物本体に比べて動きが大きいためと考えられる。
なお、本建物の外壁は、アロンウオールで改修されることとなった。
クリスタルウオール(アクリルシリコン系改修用仕上塗材)を施工した外壁の損傷状況を写真14に示す。本建物は、RC造基礎部分と鉄骨造ALCパネル張り部分からなるが、いずれの部位も割れやひび割れが発生しており、クリスタルウオールが破断している。なお、鉄筋コンクリート部のひび割れ幅は0.2 mmであった。
タイル張り仕上げ面を埋め殺すために、モルタルおよび吹付けタイルが塗布された外壁ならびにコンクリート下地面にモルタルおよび吹付けタイルが塗布された外壁の剥離・剥落状況を写真15~16に示す。
タイルへの接着性が不良なモルタルを塗布した場合や硬質な吹付けタイルをモルタル上に塗装した場合、コンクリート躯体へのひび割れの発生と同時に吹付けタイル塗膜なども破断し、剥落に至っていた。
横張りおよび縦張りされたALCパネルのせん断破壊による損傷状況を写真17~18に示す。このようなALCパネルの損傷は各所で見られ、剛構造でない鉄骨造が地震動により大きく揺すられ、ALCパネル同士がぶつかりながら破壊に至ったものと思われる。特に、横張りのボルト止め構法や縦張りの挿入筋構法の場合には、ALCパネルは変形追従性に劣るため、地震動により破壊しやすいと理解される。中高層建物では、破壊したALCパネルの破片が散乱し、歩行者に被害をもたらす可能性が考えられる。アロンウオールのような高弾性塗膜は、パネル破片の散乱を防ぐことが可能であることから、ALCパネルの保護も兼ねたアロンウオールによる塗装が有効であると感じた。
仙台市内では、写真19に示すように外壁にネットが張られた建物が多く見られ、これらのほとんどはタイル張り仕上げ外壁であった。この破壊形態は、非耐力壁のせん断破壊により発生した下地コンクリートのひび割れに沿ったものであり、多くのタイルが剥離・剥落していた。
タイルの剥離形態は、写真20に示す目地モルタルの厚み不足(深目地)によるタイルの裏足破断、写真21のようなタイルと張付けモルタルとの界面剥離など、タイル張り仕上げ外壁で見られる各種の剥離形態を垣間見ることができた。更に、接着性の良好なタイルが剥離せずに、鋭角に割れ、飛散している状況も多く見られた。
剥離・剥落したタイルの中には、経年で各層の接着性が低下し、地震の揺れにより剥落したものもあり、剥離の原因の1つである目地モルタルからの雨水の浸入によるモイスチャームーブメント(コンクリート躯体、下地モルタルや張付けモルタルの吸水膨張と乾燥収縮の繰返し)の発生を防止することにより、モルタルの接着性の低下を防止できるクリアウオールの必要性を感じた。クリアウオールであれば、写真22のような欠けたタイルの飛散防止にも役立つものと思われる【参考資料参照】。
クリアウオールを施工したタイルの鉛直方向における押し抜き試験結果を表13に示す。タイルのみを縁切りして載荷した試験の塗膜破断時の荷重は218 N(22.2 kgf)であり、安全率を 50%とすると、109 N(11.1 kgf)となる。0.1m2の張付けモルタルの浮きの質量は2.7 kg 程度であることから、クリアウオールは、この程度の浮きに対して、剥落させることなく保持できる可能性を有することが分かった。
東北地方太平洋沖地震がもたらした東日本大震災は、地震により受けた建物の被害よりも巨大津波による被害が圧倒的であった。今回、このような貴重な調査の機会を得た我々にとって、この震災は対岸の火事ではなく、今後想定される大地震に対する備えを求める警告に思える。
今回の調査の結果、大きな地震動を受けても、構造躯体に異常がなければ、アロンウオールやアロンコートSQは十分に防水性や躯体保護機能を発揮できることが明らかとなった。更に、ひび割れて落下しそうな破片をアロンウオールで剥落防止できることやタイル張り仕上げ外壁の損傷に対して、クリアウオールによる落下防止効果が期待できる結果を得ることができた。
「アロン建材シリーズ」および当社が提唱する「防水改修によるトータルメンテナンス」は、構造体である鉄筋コンクリートなどの劣化を防止し、建物の長寿命化に貢献すると共に、劣化による構造耐力の低下に対しても保護効果を発揮する。間接的ではあるが、アロン建材シリーズが少しでも減災に貢献できるよう願う。
【参考資料】
• 阿知波政史,神村浩之,谷川伸,本橋健司,透明なアクリルウレタン樹脂を用いたタイル張り仕上げ外壁用改修工法の基礎性状,日本建築仕上学会 2011 年大会学術講演会,2011年10月,pp.213〜216から一部抜粋
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