石川 敦雄
京都府立大学大学院生命環境科学研究科、准教授。博士(教育学)。専門は,環境心理学,認知心理学。Embodied cognition(身体化された認知)と呼ばれる潜在的な影響過程に関心を持っている。著書に『生命に学ぶ建築』(共著、日本建築学会編、建築資料研究社、2018)。
京都府立大学大学院生命環境科学研究科、准教授。博士(教育学)。専門は,環境心理学,認知心理学。Embodied cognition(身体化された認知)と呼ばれる潜在的な影響過程に関心を持っている。著書に『生命に学ぶ建築』(共著、日本建築学会編、建築資料研究社、2018)。
詳しく調べたわけではありませんが、「色がもたらす効果」の研究という観点では、そのツートップは、「赤」と「青」だと思っています。「わたしたちを取り囲む色(1)」でも、「赤vs青、スポーツで有利な色」1)を紹介させていただきました。
これ以外にも、赤と青を対象とした研究が非常に多く行われています。
このツートップにはなかなか追い付けないけれど、とても大事な色である「黄(yellow)」に、今回は注目してみたいと思います。
皆さんは、「黄」という色名を聞いて、何を連想しますか?
日本人を対象に、さまざまな色が象徴しているものを調査した研究によれば、「黄」は幸福や夢を象徴する色の第1位に選ばれています2)。
米国人を対象とした調査でも、「Yellow」は「Happy」や「Joy」、「Friendly」などを象徴していました3)。このように、「黄」は一般に非常にポジティブなイメージと結び付く色として知られています。
「黄」の効果に着目した研究としては、「注意の引きやすさ」を明らかにした研究があります4)。
この研究では、黒背景の画面に、「黄」「赤」「青」の3色の円形図形から2色を選び、これらをほんのわずかな時間差(8/1000~98/1000秒)で表示しました。このとき参加者は、どちらが先に表示されたかを判断して、キーを押してできるだけ早く回答することが求められました。
その結果、「赤」や「青」に対して「黄」が先に表示されるケースでは、非常に小さな時間差(たとえば8/1000秒)であっても、正しく「黄」を選択できる可能性が高くなりました。また、このような「正しく注意を引く」反応は「赤」や「青」には生じないことも示されました。
この研究の結果は、私たちの注意を正しく引こうとする場合には、「黄」を採用することが望ましいことを示しています。私たちの身の回りの交通標識などでは、「注意」を喚起するような標識に「黄」が使われていますが、ちゃんと科学的合理性があることだったのです。
交通標識の「黄」
もう1つ紹介したい研究として、「黄」に対する嗜好をグローバルに比較した調査研究があります5)。この研究では、55カ国から6000人以上の参加者を集めて、「黄」と「喜び(Joy)」との結び付きにそれぞれの地理的条件が及ぼす影響を調べました。
その結果、赤道から遠く離れていて、さらに降水量が多い国に住んでいる参加者は、「黄」と「喜び」を結びつける傾向が強いことが示されました。冒頭で、「黄」は「HHappy」や「Joy」などのポジティブなイメージと結び付くことを紹介しました。「黄」は「太陽の光」を想起させる色であり、「太陽の光」を受けることが、特に高緯度の降水量が多い国における生活においてとても大切であることに起因していると考えます。
「黄」と「喜び」の結び付き(=色が濃いほど結び付きが強い) (Jonauskaite, et al., 2019)
「黄」は、いわゆる「戦隊モノ」でも、「赤」や「青」に押されて三番手以下のポジションとなりがちです。ちょっとかわいそうな「黄」ですが、私たちの安全・安心にとっても、幸福な生活にとっても重要な色である思います。
皆さんが色を選択する機会があった際には、ぜひとも「黄」も候補に入れていただけると良いかなと思います。
1) Hill, R. A., & Barton, R. A. (2005). Red enhances human performance in contests. Nature, 435(7040), 293-293.
2) 伊藤久美子. (2008). 色彩好悪と色彩象徴の経年比較. デザイン学研究, 55(4), 31-38.
3) Sutton, T. M., & Altarriba, J. (2016). Color associations to emotion and emotion-laden words: A collection of norms for stimulus construction and selection. Behavior Research Methods, 48(2), 686-728.
4) Hu, K., De Rosa, E., & Anderson, A. K. (2020). Yellow is for safety: perceptual and affective perspectives. Psychological Research, 84(7), 1912-1919.
5) Jonauskaite, D., et al. (2019). The sun is no fun without rain: Physical environments affect how we feel about yellow across 55 countries. Journal of Environmental Psychology, 66, 101350.
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