石川 敦雄
京都府立大学大学院生命環境科学研究科、准教授。博士(教育学)。専門は,環境心理学,認知心理学。Embodied cognition(身体化された認知)と呼ばれる潜在的な影響過程に関心を持っている。著書に『生命に学ぶ建築』(共著、日本建築学会編、建築資料研究社、2018)。
京都府立大学大学院生命環境科学研究科、准教授。博士(教育学)。専門は,環境心理学,認知心理学。Embodied cognition(身体化された認知)と呼ばれる潜在的な影響過程に関心を持っている。著書に『生命に学ぶ建築』(共著、日本建築学会編、建築資料研究社、2018)。
日本と中国は、東アジアの隣国として、非常に長いつきあいがあります。そのような長い歴史の中で、日本と中国の文化には似ているところが数多くあります。例えば、言語として漢字を使うところ、米を主食とするところ、箸を使って食べ物を食べるところ等が挙げられると思います。
もちろん、2つの文化には異なる面もあります。今回は、「色」の観点から日本と中国の違いについて、参考文献などを通して学んだことを皆さんと共有していきたいと思います。
中国において、「赤(紅)」は非常に大切な色です。
中国において「赤(紅)」は、祝福や吉祥を表し、人生の大切なタイミングに「赤(紅)」は欠かせない色となっています。ということで、中国の結婚式では、新婦も新郎も「赤」を身にまといます。二人が身にまとう服だけでなく、結婚式の会場全体も「赤」が多用されます。
また、「赤(紅)」には、「盛ん」、「成功」、「円満」などの意味もあり、「紅人」とは「人気者、権力がある人から好かれている人」で、「紅運」とは「幸運」を意味しています。
また、「赤(紅)」には、「邪気をよけて悪いことを除く」という意味もあります。このように中国語において、「赤(紅)」はめでたい吉祥の色であり、中国そのものを象徴する色として認識されています。
日本においても、「赤」は神聖な力を持つ「色」であり、悪いことを除いたり、邪気を払ったりすると考えられています。神社の鳥居が「赤」であることや、岐阜県飛騨地方で古くからつくられている「さるぼぼ」が「赤」色をしているのは、厄除けの意味に由来していると考えられています。同じように還暦の祝いのときに、「赤」の“ちゃんちゃんこ”や帽子を身につけるのは、魔除けの意味があります。
一方、日本において「赤」は、否定的なニュアンスで「まったくの」、「明らかな」などの意味を加える言葉でもあり、「赤っ恥」、「赤の他人」、「真っ赤な嘘」などのように使われます。
このように、日本では「赤」に対してネガティブな意味も感じることがあり、ここが中国と大きく違うところとなっています。
中国において、結婚式は「赤(紅)」でしたが、日本における結婚式は「白」です。
「白」には、純潔、素直、神聖などの意味があり、伝統的に「白」に美を見出しています。日本の結婚式では、男性参加者の服装は、黒いスーツに白いネクタイを締めるのが慣例となっていますので、花嫁・花婿の衣装と合わせて「白・黒」の色彩の中で執り行われます。
「赤」一色に染まる中国の結婚式とは非常に対照的です。
万葉集に詠まれている歌に最も多く登場する色も「白」だそうです。このように、日本において「白」は、古くから親しまれ、好まれている色であり、日本を象徴する色と考えられています。
一方で、中国における「白」は、死亡や不吉なこととも結びつく色であり、中国ではお葬式のことを「白事」というそうです。中国では、非常にポジティブなイメージを持つ「赤(紅)」と対立する色としての「白」であり、ネガティブな意味を持っています。例えば、「白干」という言葉には、「効果がない、無駄になる」といった意味があるそうです。
また、中国の京劇では、白い顔の人は悪役で、赤い顔の人は善人役になりますが、日本の歌舞伎ではその逆で、赤い顔の人が悪役、白い顔の人が善人役になるそうです。
このように、「色」にはその国の文化や伝統、自然風土などが非常にまさに“色濃く”表れます。このことは、豊かな色彩は、豊かな文化や生活に直結している、と言い換えることもできるでしょう。
この記事シリーズでは、色を積極的に活用し、豊かな暮らしをつくっていくためのヒントや気づきを今後もご紹介していきたいと思います。
1) 唐向梅・鷲尾紀吉 (2010). 中国と日本における色彩後の対照. 中央学院大学人間・自然論叢, 31, 51-66.
2) 蘇紅 (2013). 色彩語の日中対照研究―赤・黄・黒・白の四色を例として対照する場合―. 愛知大学中日大辞典編纂所・日中語彙研究, 3, 47-62.
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