石川 敦雄
京都府立大学大学院生命環境科学研究科、准教授。博士(教育学)。専門は,環境心理学,認知心理学。Embodied cognition(身体化された認知)と呼ばれる潜在的な影響過程に関心を持っている。著書に『生命に学ぶ建築』(共著、日本建築学会編、建築資料研究社、2018)。
京都府立大学大学院生命環境科学研究科、准教授。博士(教育学)。専門は,環境心理学,認知心理学。Embodied cognition(身体化された認知)と呼ばれる潜在的な影響過程に関心を持っている。著書に『生命に学ぶ建築』(共著、日本建築学会編、建築資料研究社、2018)。
私は現在、京都に暮らしていますが、秋の京都は本当に色鮮やかです。もちろん、春もさまざまな色に溢れますが、秋を彩る「赤」や「黄」は、京都の街並みとも調和し、何とも言えない美しさをつくりだします。そんな毎日を過ごしていますので、今回は季節と色の関係について取り上げてみたいと思います。
下鴨神社の秋
米国の2人の研究者は、秋の深まりとともに、色の好みがどのように変化していくのかを縦断研究(特定の参加者に継続的な追跡調査を行う研究方法)により調査しました1)。この研究の参加者は、秋が深まっていく11週間の間に9回の色嗜好調査に回答しました。
また、この分析にあたっては、この調査期間に大学キャンパスで採取した「落ち葉」に類似した色である「葉っぱ色」と、それ以外の「非葉っぱ色」に分けて分析しました。その結果、「葉っぱ色」に対する嗜好は、季節の深まりとともに高まり、紅葉のピークを迎えるころに「葉っぱ色」が最も好きになり、その後冬に向かって葉が落ちていくと「葉っぱ色」に対する嗜好が低下していきました。
このような秋の深まりに応じた色嗜好の変化は、「非葉っぱ色」には現れませんでした。
この2人の研究者を含む研究グループは、1年間の色嗜好の変化についても調査しました。その結果、秋と秋以外の季節で色嗜好に差があることが明らかになりました。
具体的には、秋には、色鮮やかな赤もしくは黄、ならびに暗い緑に対する好みが他の季節よりも高くなるのに対して、他の季節にはこのような季節に伴う色嗜好の変化が確認されませんでした。
これら2つの研究が示していることは、私たちが秋を美しいと思うのは、秋の風景そのものの美しさに加えて、秋には赤や黄といった「秋色」を好きになっていることも影響している、と言えるのではないでしょうか。
人間は、色を見分けるための視細胞である錐体を、3種類(S、M、L錐体)持っていて、これを使ってさまざまな色を見分けています。私たちのこのような色覚を3色型色覚といいます。
一方で、多くの哺乳類は2色型色覚で、赤と緑を区別することが難しいとされています。人間を含む霊長類も進化の過程では、一度2色型色覚になりました。さらなる進化の過程で、森の中で熟した果実を緑の葉の中から見分けるために、持っていた2つの錐体の一方から新しい錐体をつくることで、赤と緑の区別ができる3色型色覚を再度獲得したと言われています。
人の「目」に、このような進化の過程があったことを前提とすれば、実りの秋に「赤」が好きになるのは生存戦略上の必然であり、私たち人間が持って生まれた特性であると言えるのではないでしょうか。
読者の皆さんがお住まいの地域の秋は、どこまで進んでいるでしょうか?是非とも、目が好きな「赤」を探しに、外に出かけてみてください。脳が喜ぶこと間違いなし、だと思います。
参考文献:
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