BMWが今年発表したコンセプトカーに「The BMW iX Flow featuring E Ink.」がある。Eインクを搭載したエクステリアは、ドライバーの指示によりボタンひとつで外装色を変えることができる。あくまでもコンセプトカーであり、BMWは将来のテクノロジーの展望を提供したに過ぎないが、色材の技術革新を感じられる事例である。
同車に搭載しているEインクを展開するのが台湾のE Inkホールディングス。前身は、液晶のパネルメーカーであり、中小サイズのパネルを生産していた。転機となったのが2009年。マサチューセッツ工科大学メディアラボ(MIT Media Lab)が開発したEインク技術と電子ペーパーの開発および量産を行っているアメリカのE Ink社を買収したことだ。今ではパネル生産は撤退し、電子ペーパーの研究開発と製造に注力している。Eインクは電子ペーパー向けに開発された製品で、液晶ディスプレイとの違いは、視覚上伝統的な紙媒体のように目に優しく、低消費電力という特長がある。
そこに大胆な応用例を示したのが、前述のBMWである。車体色が変わるメカニズムを説明すると、Eインクの構造は数百万個ものマイクロカプセルからなり、内包するマイナスに帯電した白色顔料と、プラスに帯電した黒色顔料という2種類の電気泳動式粒子が含まれる。それぞれ透明な液体の上下に浮かんでおり、プラスとマイナスが反対の電極へ吸着する原理を利用し、そのエリアに対応した黒色または白色の粒子がマイクロカプセルの上部に移動し、色の変化が起きる。なお、インク自体は印刷で使われるものと同様である。
その日のドライバーの気分で色を変えられるだけではなく、熱エネルギーの吸収を考慮すれば、夏は白色、冬は黒色というように、必要な冷暖房のエネルギー消費も抑えられる。過度にダッシュボードが熱くならないという効果もある。
カラートラベルなど近年角度によって色変化を楽しむ色材が再注目されている。Eインクは多色も可能で今後の開発と応用事例に目が離せない。
外装色をドライバーが変更できる(提供:BMW)