塗料は、「2液ウレタン塗料」や「1液常乾アクリル樹脂塗料」、「アルキドメラミン樹脂焼付塗料」などと、塗料や塗膜の構造、樹脂の名称、硬化条件などを用いて呼ばれます。
このような分類の基になる塗料や塗膜の構造や構成成分については、回を追って詳細に解説する予定ですが、今回はひとまず大枠について簡単に説明します。
塗料・塗膜中での構成成分の存在状態
塗料の主要な構成成分は、前回説明したように「樹脂」「顔料」「溶剤」です。一般的な液状も塗料や、塗装後に形成される塗膜中で、これらがどのように存在しているか、図1で模式的に示します。
塗装に使う前の塗料中では、樹脂分子は溶剤に溶解しており、顔料は溶けないで粒子状のまま散らばっています。顔料のこの状態を「分散している」といいます。樹脂の中には、図に示したように分子状態で溶解しているものの他に、粒子状に分散している樹脂もあります。これらは、「エマルション樹脂」あるいは「ディスパージョン樹脂」と呼ばれます。
塗料が物に塗装されると、時間の経過とともに溶剤が蒸発し、最終的には樹脂と顔料からなる膜(塗膜)になります。塗膜にするために、加熱(焼付)が必要な塗料もあります。塗膜は、樹脂が形成する網目の中に顔料が絡まった構造と考えることができます。
塗膜中で樹脂分子が作る網目(の結び目)を詳細に見ると、図1に示すように、樹脂分子同士が「①くっつき合っているだけの場合」「②絡み合っている場合」「③樹脂分子間で新たに化学反応が生じて架橋している場合」があります。
熱可塑性塗膜と熱硬化性塗膜
塗膜中で樹脂分子同士が、図の「①くっつき合っているだけの場合」や、「②絡み合っている場合」には、この塗膜を溶剤に投入すると樹脂が溶けてしまいます。また、塗膜を加熱して柔らかくすると、少しの力が加わるだけで樹脂分子同士がずれて塗膜が変形し、ひどい場合には流れ出してしまいます。
一方、「③樹脂分子間で新たに架橋反応が生じている場合」には、樹脂分子同士がつながっているので、再溶解することも、塗膜が大きく変形することもありません。つまり、“丈夫な塗膜”であるといえます。
①や②の状態の塗膜を「熱可塑性(Thermo plastic)」、③のような状態を「熱硬化性(Thermo setting)」と呼びます。
「熱硬化性」という言葉に惑わされそうになるのですが、架橋させるのに加熱(焼付)が必須ということではなく、常温で乾燥する塗料でも、塗膜中の樹脂分子間に架橋反応が生じれば、熱硬化性塗膜ということになります。すなわち、ここでいう熱硬化性とは「加熱しても塗膜に大きな変形がないということ」なのです。
揮発分と不揮発分
塗料を乾燥させると、溶剤が揮発することで樹脂と顔料が残って塗膜となります。添加剤は種類により、「揮発するもの」と「残存するもの」があります。
塗料の構成成分で、揮発せずに塗膜となって残存する成分を「固形分(Solid)」もしくは「不揮発分(Nonvolatile)」と呼びます。揮発する成分を「揮発分(Volatile)」と呼びます。JIS(日本産業規格)の「JIS K0067:1992『化学製品の減量及び残分試験方法』」にその測定方法が記載されています。
揮発分の大部分は溶剤ですが、塗膜形成時の架橋反応に伴って生成する水やアルコールなどの低分子物質も含まれます。
洗浄作業や塗料などから放散される有機溶剤が大気汚染物質として問題となった際に、VOC(揮発性有機物質のこと。前回参照)という言葉が用いられましたが、大気汚染防止法や労働安全衛生法などに沿って、採用や取り扱いをする必要があります。中国においては、GB規格(中国標準規格)によるVOC規制が発動し、国際的にもその規制の厳しさが増しています。
溶剤による塗料の分類
塗装作業から大気中に放出されるVOCの量を削減するために、塗膜の性能や塗装作業性はなるべく変えないで、有機溶剤の含有量を削減する技術開発が行われています。
これまでに上市されているのは、「高固形分塗料」「無溶剤塗料」「弱溶剤塗料」「水性塗料」であり、これらの呼称は溶剤の種類や含有量による分類です。
高固形分塗料は、有機溶剤の含有量が従来型塗料よりも少ない塗料であり、日本塗料工業会は「VOC30%以下又は塗装時VOCが420g/L以下」と規定しています。
無溶剤塗料は有機溶剤を全く含有しない塗料であり、粉体塗料と、UV硬化塗料のような液状塗料があります。日本塗料工業会による規定では、「VOC1%以下」の塗料となっています。
弱溶剤塗料は、現場塗装の際に塗装作業者が有害有機溶剤やその蒸気にさらされることによる健康被害易を考慮した塗料です。具体的には、溶剤の種類が「労働安全衛生法有機溶剤中毒予防規則(有機則)」の「第3種有機溶剤」である塗料(第2種有機溶剤は5%未満)を「弱溶剤塗料」と呼びます。第3種有機溶剤は、「第2種有機溶剤(強溶剤)」に比べて毒性は低いですが、一般的に塗料用樹脂が溶けにくいという特徴があります。溶解力が弱いために、弱溶剤と呼ばれます。
水性塗料は名前の通り、無害な水を溶剤とする塗料です。しかし、水に馴染まない原料成分を配合するなどの理由から、揮発分を全て水にすることは難しくなります。
よって、日本塗料工業会の規定では、「VOC含有量が1%未満の水系塗料で芳香族炭化水素が0.1%未満(記号W1)、VOC含有量が5%未満の水系塗料で芳香族炭化水素1%未満(記号W2)、W1及びW2以外の水系塗料(記号W3)」と分類し、少量の有機溶剤を含んだとしても水性塗料と称することが許されています。
1液型塗料と2液型塗料
塗料の中には、主剤と硬化剤のように二つの液がセットになっていて、塗装の直前に両者を混合して硬化させるタイプの塗料があります。一方で、1液の塗料であり、塗装後に常温で放置したり、加熱することで硬化するタイプのものも存在します。前者を2液型塗料、後者を1液型塗料と呼びます。
2液型塗料は、図の③のように樹脂分子同士が架橋反応でつながった熱硬化性の塗膜を常温で形成し、加熱は不要です。
1液型塗料にも樹脂分子同士が架橋するタイプが存在し、加熱(焼付)が必要なものと不要なものが存在します。
両者の違いは、架橋反応の進行に加熱が必要であるか、室温(常温)で進行するか、という点です。
なお、室温で架橋反応が進行するものであっても、貯蔵中に進行してはならないのは当然であり、塗装後に空気中の酸素や水と触れることで架橋反応が始まるなどの工夫がされています。塗料容器の中にも酸素や水は存在しますので、容器中の空間部分をできるだけ少なくするなどの工夫も必要です。
1液型塗料には図の①や②のような熱可塑性の塗膜を形成する塗料も存在し、これは「ラッカー塗料」と呼ばれます。
樹脂の種類による分類
塗料に用いられている樹脂の種類で、塗料を呼ぶ場合があります。例えばアクリル樹脂塗料とかエポキシ樹脂塗料などという名称が該当します。
樹脂は図1で網目を形成する糸の1本1本に相当します。従って、例えばアクリル樹脂塗料であっても、図の①や②の場合は「アクリルラッカー塗料」、③で架橋剤にメラミンを用いている場合は、「アクリルメラミン樹脂(焼付)塗料」、架橋剤がポリイソシアネート樹脂の場合(混ぜるとすぐに反応するので2液にする必要があります。)は「(2液)アクリルウレタン樹脂塗料」などのように、種々の硬化形式を用いることが可能です。
このように、樹脂の名前だけでは塗料の本質を表すのに不十分なので、硬化剤の種類や硬化反応の名称を付け加える必要があるのです。
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