塗料は、「樹脂」、「顔料」、「溶剤」の3つと、少量の添加剤から構成されます。顔料を含まない「クリアー塗料」と呼ばれるものもあります。
塗料の構成成分については回を追って詳しく説明する予定です。
各成分の具体例とその役割について概要を表1に示します。
樹脂
塗料用には「シェラック」や「ロジン(松脂)」など天然由来の樹脂も使用されますが、ほとんどは石油から製造される合成樹脂が使用されています。
合成樹脂は、溶剤分子よりも分子量が数十倍から数万倍大きな化合物で、分子は糸のような細長い形状をしています。多種多様な低分子の単量体(モノマー)があり、これらを化学反応でつなぎ合わせて合成樹脂にします。つなぎ合わせる操作を重合と言います。
重合させる化学反応の種類の違いで、アクリルやポリエステル、ウレタンなどと分類されます。上述のように、現在では塗料用合成樹脂はほとんど石油由来のモノマーから合成されています。さらに昨今、社会で温室効果ガス削減といった環境保護への機運が高まる中、バイオマス由来の原材料をモノマーとして塗料用樹脂に使用する試みもなされています。
塗料用合成樹脂は、単一種類のモノマーだけを用いて合成することはまれで、何種類ものモノマーを組み合わせて合成されることが大半です。これは、膜の硬さや柔軟性、基材への密着性、硬化性など、用途に応じた性質や性能を発現させるためです。
また、「硬化剤」もしくは「架橋剤」と呼ばれる物質を樹脂と混合しておき、塗装の後に樹脂分子同士を結合させて、塗膜を強靭にするタイプの塗料も多数存在します。よって塗料の性能は樹脂で決まると言っても過言ではありません。
顔料
顔料は、有機もしくは無機の粒子状の化合物で、肉眼では認識できませんが、顕微鏡で見るとひとつひとつの粒子は、図1に示すように、球状、米粒状、レンガ状、針状、りんぺん(うろこの一片)状などさまざまな形状をしています。
顔料の粒子径は数ミリメーターから数十ナノメーター程度です。顔料は塗膜中で光を吸収したり、散乱したりしながら、塗膜に色彩や意匠性を付与します。また被塗物を隠ぺいするのも大事な役割です。このような顔料は「着色顔料」と呼ばれます。粒子形状が、りんぺん状の顔料は、光を反射したり干渉させたりすることにより、塗膜に光輝感やパール感を付与します。
さらに顔料には、塗料の比重や塗膜硬度を調整するもの、コストダウンに寄与するもの(「体質顔料」)、塗膜下のpHを調整するもの、腐食抑制物質を放出して金属製被塗物の錆(さび)を抑制するもの(どちらも「防錆顔料」)などがあります。
溶剤
溶剤には分子量が比較的小さく(30~150程度)、常温では液状の有機化合物が使用されます。また、水が溶剤として使用される水性塗料もあります。水は分子量が18と非常に小さいにもかかわらず、室温では液状であり、沸点や蒸発潜熱も大きな値を示します。このような化合物は他には存在しないので、水は“かなり変わった溶剤”であるといえます。このため、水を塗料溶剤として使用するには、樹脂の溶解性など、さまざまな注意や工夫が必要になります。なお、水の溶剤としての特異性については、別途、回を設けて説明する予定です。
溶剤は樹脂を溶かし、顔料を分散させて、均質な塗料や塗膜になるようにします。また、塗料を塗装しやすい粘度に調整し、被塗物表面に均一に塗り拡げられるようにします。溶剤は塗装の際には必要ですが、塗装後は蒸発して大気中に放出されます。
「揮発性有機化合物」は英語で「VOC(Volatile Organic Compounds)」といいます。塗装工程から放出されるVOCのほとんどが溶剤です。有機溶剤が多量に放出されると、大気汚染や塗装作業者の塗装環境汚染につながります。塗料の性能はそのまま維持し、有機溶剤の含有量を減らした「高固形分塗料」。「弱溶剤」と呼ばれる毒性の低い溶剤にした「弱溶剤塗料」。有機溶剤を無害な水に置き換えた「水性塗料」などへの塗料形態の転換が進んでいます。また溶剤を全く含まない粉体塗料も開発されています。
添加剤
塗料の主要成分は、冒頭から説明してきたように、樹脂、顔料、溶剤の3つです。塗料の製造、保管、塗装という工程を経て、塗膜としての機能発現する際に、例えば、「塗装時は粘度が低くて塗装しやすいけれど、塗装後にタレてしまう。」とか、「撹拌すると泡が立って、なかなか消えてくれない。」などの問題を生じさせないようにすることは、3つの主要成分の働きだけでは実質的に困難です。このため、少量で特定の機能を発現し、問題を解決できる成分を添加しますが、これを「添加剤」と呼びます。
添加剤は表1に示した他にも多種多様なものが使用され、多くの場合、目的とする機能に「~剤」を付けて呼ばれます。例えば、「顔料分散剤」「消泡剤」「表面調整剤」などです。
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